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2011年1月28日 (金)

[読書メモ]神野直彦『「分かち合い」の経済学』

「分かち合い」の経済学 (岩波新書)(神野直彦)

今年の経済テーマの1つになる予感がする、「シェア」の考え方を先取りした本かな、と思って図書館で借りてきました。
でも(神野氏の考えのベースを知らなかったこともありますが)だいぶ方向性が違いますね。

21世紀以降、とくに小泉政権以降顕著になった、新自由主義のもとでの競争社会、格差社会を強く批判しています。行き過ぎた新自由主義が、目先の利益に走りすぎ、株主にばかり慮る状況になり顧客や従業員にしわ寄せがくる事態を招いていることは、私も感じるところです。
(株を持て、投資しろ、ということかもしれないですけど、まじめに働く人間が報われないのはどうかと。)

とはいっても、スウェーデンにならった社会保障を導入することが正しいとは、自分には思えないところがあります。
北欧諸国の実態を知らないのですが、この本に書かれているようなきれい事では済まないはず。知っている範囲では、企業への支援はほとんど行われず、ボルボなどの大企業も再編を余儀なくされる国だと聞いています。スウェーデン的な制度が日本に導入されたとき、大量の失業者を生むことになるのではないかという不安も大きいのではないでしょうか。

冒頭の子ども手当導入に対する世論への言及も、何か当を失している感じがしました。
子供のいない世帯からの批判を「思いやりの心を失った」と指弾していますが、本文では社会福祉はカネではなく、サービスで行うべしとあり、結局(著者が非難している)世論の批判は当然の帰結であるといっているのではないかと、矛盾を感じてしまいました。

そして、「同一労働、同一賃金」は、やっぱり違うと思う。単純労働なら「同一労働、同一賃金」でいいのかもしれませんが、いまの日本に求められているのは、働く人一人一人が自分の頭で考えて成果を上げていくこと。とくに自分の職種(IT開発)は、人による作業能率が10倍以上違うこともあるので、成果を出せる人間に傾斜した賃金を与えるほうが適切ではないかと思うのです。

自分が期待している「シェア」は、政府や自治体に頼らず、民間である私たち一人一人が、自分が持つもの(情報など無形のものも含む)を他者に提供し、持っていないものを他者から提供を受ける、相互依存的な関係です。
そして「シェア」はボランティアである必要もなく、ビジネスでも全くかまわない。むしろビジネスとして、自分と相手だけではなく、仲介者や社会全体も巻き込んで、ものや情報の共有でみんなにWin-Winの関係を作り出すように、社会の仕組みを作ることが待たれているのではないでしょうか。

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