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2011年2月13日 (日)

[読書メモ]秋庭俊『大東京の地下鉄道99の謎』

大東京の地下鉄道99の謎―各駅の地底に眠る戦前の国家機密(秋庭俊)

読書会で紹介されて、気になって読んでみた書籍です。
このブログでは、普段はビジネス書ばかり紹介していますが、たまにはこういった雑学もよいだろうと……というか、ストックが尽きたというのもあるのですが(笑)。

読書会で紹介してくださった方には失礼になるかもしれませんが、以下率直な感想を。
トリビア本だと期待して読み進めたのですが、その価値さえなかった、というのが正直なところです。戦前の郡部や財閥が東京の地下にいろいろな地下道・地下鉄や施設を作っており、それらをあるものは転用、あるものは隠蔽したため、現在のような不可解な連絡経路になったというのが作者の主張ですが、その前提が陰謀論というか、思い込みというか、根拠がないまま書き進められてしまっています。
結果、作者の妄想(と呼んでもよいでしょう)が拡大再生産されただけの内容に終わってしまっています。

と、調べずに批判的な言葉を並べてしまうと、作者と同じレベルになってしまいますので、この本の著者である秋庭氏のことを、書籍の著者紹介とネット上の情報だけですが検索してみました。
大学卒業後、テレビ局の記者として海外での取材に多く携わり、退局後は作家として活動されているようです。大学は経営学部を卒業とあり、どうやら歴史学を体系的に学んだという実績はなさそうです(ここで間違っていたらごめんなさい)。

自分も放送大学で歴史学の論文を書いたときに、同じミスをやってしまったことがあるのですが、文献その他の論拠もなしに仮説を推し進めてしまうと、自分の頭の中ではつじつまが合っていても、全く説得力のない、また事実であるかどうかの判断さえできない、荒唐無稽な論ができあがってしまいます。著者さん、この書籍を出した2007年の時点で8年間東京の地下に携わっているということですので、自説が自分の中で完成してしまい、外部からの批判が聞こえなくなっているようにもみえます。
歴史学的には、史料がないことを論拠として仮説を提示する、つまり自分の新説に対し「否定する史料がない」という方向での主張は、まずありえません。ある対象について記されているありとあらゆる史料を提示し、そこから論理的に導かれる内容(これが学者によって全く逆の見解を導くこともよくあるのですが)こそが歴史学の学説として意味を持つ、そういう世界です。
近代史は史料が多すぎるくらい豊富にあるので、いくらでも調べようはあるはず。国や東京府市の議事録、工事の発注史料、関係者の証言や日記など。こういった史料がほとんど提示されず、出てきても自分の都合のいいところだけで、あとは地図と現状の目視調査だけですから、仮説どころか想像、あるいは「妄想」の域を出ないといってよいかと思いました。

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