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2011年2月

2011年2月27日 (日)

[読書メモ]羽生善治『大局観』

大局観 自分と闘って負けない心 (角川oneテーマ21)(羽生善治)

ビジネス書の著者の中で好きな人をあげるとすれば、自分の場合はまず間違いなく、羽生名人の名前が入ります。
羽生名人、もちろん本業は将棋のプロ棋士ですので、著作は棋書(将棋の上達のための書籍)に偏っていますが、棋書以外のこういったビジネス書や対談集が、将棋に詳しくなくてもわかりやすく、かつその考え方が非常に参考になります。

中学3年生のときにプロ棋士になった羽生名人も、現在は40歳。デビューしたての若い頃と現在との違いを、「大局観」という言葉で表しています。いわく、若い頃のほうが手を「読む」力はあったが、経験を積むごとに「大局観」がついてきて、読みだけで手を進めなくてもよくなってきた。
大局観を私なりの言葉で説明すると、大所高所から物事を分析し判断する力ということになるかと思いますが、経験を積むことで自分の目の前の問題の全体像をつかむことができ、不要な選択肢を最初から取り除けるということがいえるのではないでしょうか。

選択肢という意味で、おもしろい分析が冒頭にありました。
「多くの選択肢から1つを選ぶのと、少ない選択肢から1つを選ぶのとでは、あとになってどちらがその選択を後悔しやすいか」。
経験的にも当てはまると思いますが、選択肢が多いほど、後悔しやすいとされています。選ばれなかった手段については、メリットは見えてもデメリットが見えにくいため、選択肢が多くて迷えば迷うほど、選んだ手段だけデメリットがあったように思えるからでしょう。

大局観について掘り下げているのは第1章ですが、その他の章も含蓄があります。とくに第3章は「負けること」という章題がつけられており、負け=失敗から得られることや、さらにそこから発展して記憶や情報の扱い方といった部分で、勝負師ならではの視点で書かれています。
ただ、将棋とチェスとの比較は、ページを割く必要があったかどうか。チェスのルールにおいて明らかな誤りもあり(羽生名人はチェスも指すので、羽生名人自身の誤りというよりも編集ミスだと思うが)、ここは疑問手かなと思いました。

以前このブログにも取り上げた、ヨットレーサーの白石康次郎氏のお話や、経済評論家の勝間和代さんとの対談のことも書かれています(勝間さんが会った棋士というのは、やはり羽生名人だったのかな)。ほかにも映画『アバター』や経済書『ブラック・スワン』(これも去年読みました)などにも言及されており、幅広く書籍や映画などで知識を得ている人には、何倍もおいしい書籍になっているかと思います。

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2011年2月21日 (月)

[読書メモ]岡島悦子『ビジネスプロフェッショナルの仕事力』

ビジネスプロフェッショナルの仕事力(岡島悦子)

2008年に出版された本で、本田直之さん、勝間和代さん、糸井重里さんら、そうそうたるメンバーが参加しています。仕事力となっていますが、「情報活用力」と帯にはあり、そちらのイメージが近いでしょうか。

印象に残ったのが、1章の御立尚資さん。自分自身のゴルフの経験から、ゴールを決めてそこに着実に到達するステップを考える技術が、自分のやり方(要はまず手を動かす)とは全く逆で、新鮮でした。走りながら考えてしまって、最初に頭を使うのが苦手なのですが、スタートがしっかりできればもっと自分はうまくやれるのかもしれない、と思いました。

3章で勝間さんに将棋界の厳しさを話された棋士はどなたでしょうね。将棋界で勝間さんと対談できる人というと、羽生名人が真っ先に思い浮かぶのですが、羽生名人なら名前を出されているでしょうし、うーん、どうなんでしょう。

5章の糸井重里さん、徹底的に消費者の目線で考え、「プロの消費者」が現れたというあたり、よくわかります。自分もものづくりの現場にいますが、ユーザーのことを忘れ、技術におぼれてしまうと、使い勝手の悪い製品を作ってしまいます。技術は手段であり、目的ではないというのを、常に意識して仕事に向き合いたいものです。

6章の田坂広志さんのウェブ革命、いま中東やアフリカで起こっていることにも重なりますね(あちらは政権を倒して本当の「革命」になりましたが)。情報の非対称性がなくなり、皆が同じ情報を持ったとき、仕事の上で何を差別化要因とするか。戦略であり、感性であり、先を見通す力ということになるかと思います。

少し古い本ですが、かなり以前に買って積ん読にしていたものでした。
最後の日経の宣伝は蛇足になってしまっていますが、それを除けば、もっと早く呼んでおけばよかったと思う1冊です。

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2011年2月19日 (土)

[勉強会]2011/2/19 PRESIDENT 2.14号、3.7号 読書会

○コミュニティ名:プレジデント読書会 in 東京
○名称:【2011/2/19(土)】9:00~12:00 PRESIDENT 2.14号『「グズな人」はなぜ、グズなのか』、3.7号『孫正義の白熱教室』 読書会
○日時:2011年2月19日 9:00~11:30
○場所:エクセルシオールカフェ 永田町店 Googleマップ
○課題書:『プレジデント
2011 2.14号『「グズな人」はなぜ、グズなのか』(1月24日発売)
2011 3.7号『孫正義の白熱教室』(2月14日発売)
○添付ファイル:プレゼンテーション資料(PDF形式)
○参加者:2名

久しぶりに土曜日の開催にしたのですが、告知がうまくいかなかった(同報送信メールを送り忘れていたりした)こともあって、当日自分ともう1名しか集まりませんでした。
来られなかった人を責めるつもりはなく、自分の慢心がいけなかったと思っています。いつもの通りイベントトピックを作っておけば、放っておいても人は集まるだろうと高をくくっていた部分がありました。

さて、自分以外にもう一人いれば開催できるので、プレゼンを発表して、感想を聞いていきました。
最新号が出るまでは、2.14号の時間管理術がメインになるかなと思っていたのですが、孫正義さんを持ってこられたら、インパクトは絶大です。
稲盛和夫さんや船井幸雄さん、もう少し下の世代では柳井正さんや似鳥昭雄さん、といった現代日本の名経営者の中に、孫正義さんの名前を連ねても、多くの方は当然だと感じるのではないでしょうか。

ちょうど、自分は2月から勤めた会社の社内勉強会で、社長自らリーダーシップについての講義に参加したのですが、孫さんのいう「志」と社長のいわれたリーダーシップとに、相通じるところがありました。
腹を決めて、自分の行動や決断の結果起こること(行動や決断を「しない」結果起こることも含めて)に責任を持って受け入れる、ということが上に立つものとして必要ですし、そのためにはビジョンとそこに至る道筋を明確にしなければなりません。今回の記事では「右脳による未来のイメージ」と「左脳による実現へのロジック」という形で、また別の記事では「数字を入れた大ボラを吹いて、それを実現させる」という表現がありましたが、まさしくそれが、今後求められるリーダー像と言えるでしょう。

「志」についてもう少し掘り下げると、別の事例でテレビでやっていたものだそうですが、回転寿司チェーンのあきんどスシローの専務が、もともとゼンショーから出向し経営に関わっていたのですが、スシローの経営理念に共感して転職したということです。
理念への共感というのは非常に重要なところで、すべての従業員が企業理念に共感することから、企業の運営は始まるといっても過言ではないと思います(このあたりは、以前読んだ『ビジョナリー・カンパニー』に書かれていたことの受け売りですが)。

堀江貴文・元ライブドア社長のコメントも印象的でした。
孫さんと堀江さんの違いですが、自分の理念がステークホルダーに適切に伝わっているか、という部分にあるかと思います。マスメディアを敵に回したというより、ステークホルダーに理念への共感が得られたかどうかという点で、大きな違いがあると感じました。
(このへん、勉強会の場ではコメントできなかったのですが)

次回はきちんと準備して、人数を確保できるようにしたいです。
今回はすみませんでした。

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2011年2月17日 (木)

[読書メモ]ジム・ドノヴァン『誰でもできるけれど、ごくわずかな人しか実行していない成功の法則』

誰でもできるけれど、ごくわずかな人しか実行していない成功の法則(ジム・ドノヴァン)

タイトルにはテーマの数は入っていませんが、○○するための○○個の法則、というタイプの書籍です。1つのテーマが見開き2ページに収まっているので、ページ数のわりには読みやすいかと思います。
長いタイトルですが、秀逸です。原題は「This is your life, not a dress rehearsal」で、直訳は帯にも書かれている「これがあなたの人生だ、リハーサルではない」となります。自分には日本語訳本のタイトルのほうが、ずっとしっくり来ました。

自分のことになりますが、成功するための行動が何も取れていない。成功の具体的なイメージができていないし、そもそも本当に成功したいのかどうか、自分でもわかっていない。そういう部分があります。
変化を好まないとか、リスクをとりたくないとか、多くの本で書かれていることですが、自分の場合はそれ以前の問題ではないかと考えています。つまり口では成功したいといっていても、心の奥底では成功を拒んでいる自分があるのです。

この本に書かれている一つ一つのことは、ほんとうに簡単です。実践するのもそんなに難しくはない。ですが自分を含め、ほとんどの人が行動に移せていません。
「こうなりたい」という明確なイメージを作り、そのために準備をして、実行し、その結果を責任を持って受け入れる。結局はそれだけですから。

少なくとも自分の場合、高々これだけのことができないのは、結果に対する責任を負いきれないと思っているからです。
「成功した自分の姿」にしても、そこにたどり着くまでに多くの指摘や批判を受けるでしょうし、たどり着いた後も万人に高く評価されるわけはありません。そういった他人からの視線も含めて、あらゆる責任を負おうとすると、やっぱり逡巡してしまいます。
そこで責任を負うのをためらわない人が、成功者になる資格を得るのだろうなと思いますが、そういう人はごく一握りしかいないのではないでしょうか。

成功への道にどういった批判やねたみ、反対があって、それらをどのようにして受け入れていけばいいか。そういう視点から書かれた本があれば、いい本になると思います。
いま、世の中にそんな書籍はあるのでしょうか。あったら誰か紹介してください。

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2011年2月13日 (日)

[読書メモ]秋庭俊『大東京の地下鉄道99の謎』

大東京の地下鉄道99の謎―各駅の地底に眠る戦前の国家機密(秋庭俊)

読書会で紹介されて、気になって読んでみた書籍です。
このブログでは、普段はビジネス書ばかり紹介していますが、たまにはこういった雑学もよいだろうと……というか、ストックが尽きたというのもあるのですが(笑)。

読書会で紹介してくださった方には失礼になるかもしれませんが、以下率直な感想を。
トリビア本だと期待して読み進めたのですが、その価値さえなかった、というのが正直なところです。戦前の郡部や財閥が東京の地下にいろいろな地下道・地下鉄や施設を作っており、それらをあるものは転用、あるものは隠蔽したため、現在のような不可解な連絡経路になったというのが作者の主張ですが、その前提が陰謀論というか、思い込みというか、根拠がないまま書き進められてしまっています。
結果、作者の妄想(と呼んでもよいでしょう)が拡大再生産されただけの内容に終わってしまっています。

と、調べずに批判的な言葉を並べてしまうと、作者と同じレベルになってしまいますので、この本の著者である秋庭氏のことを、書籍の著者紹介とネット上の情報だけですが検索してみました。
大学卒業後、テレビ局の記者として海外での取材に多く携わり、退局後は作家として活動されているようです。大学は経営学部を卒業とあり、どうやら歴史学を体系的に学んだという実績はなさそうです(ここで間違っていたらごめんなさい)。

自分も放送大学で歴史学の論文を書いたときに、同じミスをやってしまったことがあるのですが、文献その他の論拠もなしに仮説を推し進めてしまうと、自分の頭の中ではつじつまが合っていても、全く説得力のない、また事実であるかどうかの判断さえできない、荒唐無稽な論ができあがってしまいます。著者さん、この書籍を出した2007年の時点で8年間東京の地下に携わっているということですので、自説が自分の中で完成してしまい、外部からの批判が聞こえなくなっているようにもみえます。
歴史学的には、史料がないことを論拠として仮説を提示する、つまり自分の新説に対し「否定する史料がない」という方向での主張は、まずありえません。ある対象について記されているありとあらゆる史料を提示し、そこから論理的に導かれる内容(これが学者によって全く逆の見解を導くこともよくあるのですが)こそが歴史学の学説として意味を持つ、そういう世界です。
近代史は史料が多すぎるくらい豊富にあるので、いくらでも調べようはあるはず。国や東京府市の議事録、工事の発注史料、関係者の証言や日記など。こういった史料がほとんど提示されず、出てきても自分の都合のいいところだけで、あとは地図と現状の目視調査だけですから、仮説どころか想像、あるいは「妄想」の域を出ないといってよいかと思いました。

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2011年2月12日 (土)

[勉強会]2011/2/12 書店内カフェで読書会@北与野

○コミュニティ名:本を共に読んで活かす会@大宮
○名称:2/12(土) 書店内カフェで読書会@北与野
○日時:2011年2月12日 10:00~12:00
○場所:ブックデポ書楽内「カフェビーンズ」(Googleマップ
○参加者:6名

以前、このブログで思いつきを記事にした、「書店での読書会」を実現してきました。自分が埼玉県(川口市)に住んでいることもあり、さいたま市内の大型書店での開催としました。
たまたま埼玉にこういった場所があったというのもありますが、これをきっかけに、埼玉でも勉強会や読書会が盛り上げられるのも悪くないですね。

実現にあたって、埼玉県内で読書会・勉強会を運営されているコミュニティの協力を得られたことに、感謝します。
前日の雪や寒さについては自分ではどうしようもなかったのですが、会場が狭く、喫煙席に移動せざるを得なかったのは申し訳なかったです。週末の朝は、結構混むんですね。
以下、今回紹介された書籍です。
就活極意 また、「お祈りメール」がきました。(入江恭広)
トルコのもう一つの顔漂流するトルコ―続「トルコのもう一つの顔」(小島剛一)
ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験(大鐘良一/小原健右)
のぼうの城(上/下)<小学館文庫>(和田竜)
オール1の落ちこぼれ、教師になる(宮本延春)
いつかはハワイ島で暮らす (おとなの夢シリーズ (1))(加藤賢一)
大まかにいうとキャリア系のビジネス書が3つ、外国の紀行文が2つ、小説が1つ。幅広いジャンルの本が集まりながら、この本とこの本がつながってくるよね、というものもありました。

どの本も、紹介されるだけの魅力があるし、各参加者がその本を紹介するだけの理由があります。
「自分の好きな本を紹介する」という簡単なコンセプトではあるのですが、そこには本の魅力と紹介者の思い、そして聞き手の経験が積み重なり、非常に中身の濃い意見交換となりました。
この形式の読書会は、敷居が低いわりに、得るものが大きいと思います。。これまで雰囲気がわからなくて参加できていなかった方も、是非足を運んでいただきたいですね。

ほんとうは、せっかく書店で読書会を開催しているので、書店とのコラボレーションをやりたいのですが。
どういう形で実現させられるのかはまだ考えがまとまっていませんが、読書会で紹介された書籍や、出てきた意見をお店のほうにフィードバックして、販売や広告につなげられればというイメージは持っています。
使い古された言葉ではありますが、読書会と書店がWin-Winの関係になればうれしいですね。

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2011年2月10日 (木)

[読書メモ]入江恭広『また、「お祈りメール」がきました。』

就活極意 また、「お祈りメール」がきました。(入江恭広)

今月の頭(2011年2月1日)に自分が転職した会社の社長の著書です。
自分はIT開発者として当社に勤務していますが、当社の軸としてはもう一つ、採用コンサルタントという事業があります。事業内容は詳しく書きませんが、採用という観点から、採用する側から書いた本ということができるかと思います。

タイトルにある「お祈りメール」は、不採用通知のこと。自分が今の時期に大学生で、新卒の就活を行う側だったら、何を武器にして就活に望んでいたか。そしてどれだけの不採用通知を受け取っていたかと考えると、今の若い人たちが就職難に苦しむのがよくわかります。
逆に、15年のキャリアがあったから採用に至ったのかもしれませんが、この本を読み進めて、おそらくそれだけが理由ではなかっただろうと感じました。

悪い事例、採用に至らない理由のほうを表に出していますが、全体を通して言えるのは、自分の経験を言葉にできない人は弱い、ということ。よくある就活マニュアル本から借りてきた言葉だけで、採用に至るのは難しいということです。
誰でも、多かれ少なかれ、自分にしかない経験をしてきているわけですし、その経験を自分の言葉で説明できないのがよろしくない。ましてや、そういった経験が記憶にないというほど他人や空気に流される生活を送っているなら、考え方を早急に改めてほしい、そういうメッセージが伝わります。

さて自分の場合。今度の会社が3社目になりますが、同じIT開発者とはいえ、前の2社では自分のPCにインストールする、パッケージ製品を中心にやっていました。今度はインターネットやモバイルアプリケーションが中心となります。望んでのこととはいえ、違う世界に飛び込むことになり、これまでの経験がどこまで生きるのかという不安はありました。
15年のキャリアのうち、10年近く前のわずかな期間ですが、インターネットアプリケーションを開発していました。また別の時期に、製品をゼロから企画する経験も積みました。職務経歴書はしっかりと記述して、この2点については強くアピールしてきました。
そして、仕事を離れたところでは、読書会の経験談(主催もしているので、もちろんそれも含めて)を、上京してきた理由と絡めて答えています。IT開発者としての評価になるかどうかはわかりませんが、こういった経験がプラスに働いたことは間違いないと思います。

現在就活中の方も、こういった読書会や勉強会は、社会人になっている人のお話を直接聞ける機会でもあり、非常に有意義だと思います。
私もいくつか主催していますので、よろしければ参加してくださいね(と、最後は自分の宣伝)。

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2011年2月 9日 (水)

[読書メモ]ティム・ハーフォード『人は意外に合理的』

人は意外に合理的 新しい経済学で日常生活を読み解く(ティム・ハーフォード)

昨年から読書会に参加するようになり、経済学のそれなりに分厚い本を読むようになりました。といっても経済学を体系的に学んだこともなければ本職でもなく、それゆえにもっぱら読み物的なものしか読んでおらず、素人に毛が生えた程度ではあるのですが、この本はそれなりにおもしろく読めました。

経済学の理論といえば、現実にはあり得ない制約や単純化がなされた市場モデルや、難解な数式の羅列というイメージがありますが、本書で取り上げられるのは日常生活の中の、およそ経済学とは関係のなさそうな問題であり、数式を全く使わずに人の行動を解いていきます。
経済学のモデルでは人間は完全に合理的な判断を下す前提ですが、実際には趣味嗜好もあれば感情もある。そのため不合理に見える判断を下すこともありますが、実は不合理に見えるという私たちの常識のほうを疑うべきだ、というのが、本書全体を通した考え方と言えるでしょう。

さて本書、1章がいきなりセックスの話なので、読んだ矢先にどん引きする人もいるかもしれません(しかも2章がギャンブルの話だから、なおさら)。ですがセックスもギャンブルも経済学の理論から、常識に反すると思われる行動が実は合理的だったということを導いています。

後半の、都市と農村(人口過密と過疎)の問題は、自分の経験としてよくわかります。2009年に、自分は徳島から東京に転職し、住まいも埼玉に移しました。元の仕事が嫌だったということはなかったのですが、東京という大都会が持つ強い魅力――多くの人に会え、刺激を得て、知識を獲得すること――にとりつかれ、住宅や通勤の環境が悪化することは受け入れることができました。
それと同じことが、多くの人の身に起こっているのだというのがわかります。交通網の発達とインターネットの普及で、地球のどこにいても同じものを食べ、同じ情報を得ることができます。ところが実際には生きた情報を得るため、人の多いところにさらに人が集まってきます(交通網の発達により、移動も楽になったことも理由でしょう)。これが、都市がさらに発達し、農村がますます過疎化するロジックです。

こういった、一見不合理に思えることが実はそうではない、ということが、経済学の立場から見えてくるというのは、非常に示唆に富んだ話だと思います。
先日のブログにも書きましたが、大相撲の八百長問題を経済学的に研究する人はいないでしょうか。

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2011年2月 7日 (月)

[雑感]大相撲の八百長問題に思う

大相撲の八百長問題が、春場所の開催中止という最悪の事態にまで発展しており、真相解明にはまだまだ時間を要しそうです。
自分は大相撲のファンではなく、たまにスポーツニュースで結果を知る程度で、最近は知らない四股名の関取ばかりになってきたなあ、という印象もあります。

それはさておき、自分の趣味である将棋と相撲は、どちらも日本古来の文化であり、プロの協会が公益社団法人への移行を目指しているという共通点があります。
とはいえ、将棋の八百長はあまり耳にしません。「米長哲学」(米長邦夫氏は現在の日本将棋連盟会長で、名人経験者でもある)とよばれる、相手にとっての大一番(リーグ優勝がかかるなど)のときこそ全力で打ち負かすべしという考え方が浸透していることも影響しているかもしれませんし、賭の対象として暴力団の資金源とするには対局に時間がかかりすぎる(それに、将棋で賭けるなら自分で指すでしょう)というのもあるかもしれません。
ですがそれ以外にも、将棋と相撲の本質的な違いにおいて、将棋では八百長が行われにくい理由があるように感じました。

ひとつは、将棋は勝ち負け以外のところにも評価の要素があること。
将棋の究極の目標として、両者が最善手を指し続けたとき、先手後手のどちらが勝つのかを求めるというものがあります。これはコンピュータの力を借りた純粋な計算で求まるはず(現時点ではまだ求まっていません)で、人間同士の勝負でも、新しい構想や指し手を芸術的・文芸的に評価することも行われています。
相撲も、心技体ですから、人間性の部分を前面に押し出していいと思うのですが、勝ち負けだけにこだわりすぎているように思います。

そしてもっと大きな理由として、相撲のほうが八百長をするインセンティブが大きいというのがあります。
対戦相手の力士は、倒すべき敵でありながら、相撲文化を発展させる仲間でもあるという側面があります(これは将棋も同じ)。相手を負かすことで、負かした相手の番付が大きく下がってしまい、それが相手力士の報酬や待遇に大きく影響することを考えれば、情が入ってしまう部分は出るでしょう。
現状の角界の待遇は、自分が勝ち星を伸ばすことよりも、みんながほどほどに勝ち星を揃えることのほうがよい、という状況になってしまいがちなのではないかと感じるのです。
このあたり、経済学的にみるとどのような見解になるのか、興味があります。

もちろん、今回の八百長問題を擁護する気はないし、相撲の勝負が賭け事として暴力団の資金源になっていたり、カネで星が買えるようなことが常態化していたりするのであれば、言語道断です。
当然、徹底的な調査と再発防止を期待するものではありますが、勝負に徹するよりも仲間内で星を回しあうほうがインセンティブが高くなる状況があるならそれを改善しないと、根本的には何も解決しないのではないかと思うところです。

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2011年2月 6日 (日)

[勉強会]2011/2/6 ブックカフェで行う読書会@大宮

○コミュニティ名:ブックカフェで行う読書会
○名称:2/6 ブックカフェで行う読書会@大宮
○日時:2011年2月6日 11:00~13:00
○場所:ROOT☆CAFEGoogleマップ
○参加者:5名

ブックカフェ。
カフェの店内にいい感じの書棚があって、注文した珈琲をたしなみながら、書棚に並んでいる恋愛小説を楽しむ優雅なひととき。……というのを想像して、だいたい間違いないかもしれません。
今回使ったお店にはそれほどたくさんの本が置かれていたわけではありませんでしたが、大宮駅(埼玉県内の中心駅で、新幹線も停まります)から歩いて4~5分のところにあるとは思えないほど落ち着いた雰囲気のお店でした。

まず自己紹介と、好きな作家を1人。自分が読むのはビジネス書ばかりなので、好きな作家というのはいないのですが、この人の考え方は参考になるという意味で、将棋の羽生善治名人。
もちろん物書きが羽生名人の本業ではありませんが、『決断力』という著書もあるように、ビジネスや生活のそこここで必要となる決断の方法、つまりどのように情報を取り込み、不要な情報を捨て、最終的に1つの選択肢をえらぶか、ということについて、羽生名人の著書は非常に参考になります。
(もちろん、羽生名人の将棋棋書もたくさんありますが、棋書よりビジネス書のほうがおもしろいと感じるのは私だけでしょうか。)

今回、自分も含めて、紹介されたのはこの5冊。
肩ごしの恋人(唯川恵)
影響力 その効果と威力(今井芳昭)
大東京の地下鉄道99の謎(秋庭俊)
ツイッターノミクス(タラ・ハント)
ファンタジア(ブルーノ・ムナーリ)
小説、新書、雑学、ビジネス、アートと、全く異なるジャンルの5つの作品が紹介されました。その中から1冊、ここでも紹介します。

第126回直木賞作品『肩ごしの恋人』。対照的な2人の女性が主人公となるこの作品は、女性としての女のあり方を考えさせられる1冊となっています。
ファシリテーターさんがこの本に強い思い入れがあり、その思いを含めて紹介されたのですが、本の紹介とあわせて全員への質問として、「女性(男性)であることのメリット・デメリット」を尋ねられました。
自分の答えとしては、制度上は男女の差別はなくなったが、まだまだ社会的には男が働き、女が家庭を守るという風潮が強い。そのため、働く面では男性は恵まれている(というより、女性であることのハンデがあまりにも大きい)とはいえる。反面、社会人として一家を養うという責任がついて回るのは、男性であることのデメリットだと感じています。
脱線するかもしれませんが、共働き家庭でも、夫は妻の負担を減らすために稼ぎを増やすことが、妻は夫の負担を減らすために家事をこなすことが求められるのが、現実に残っているといえるわけですし。

全員の本の紹介が終わったあとも、きょうだいのことや恋愛話で盛り上がったりと、カフェでの会話ならではという楽しみ方もできました。
ちょっとだけ、女子会に参加した雰囲気……なのかな。

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2011年2月 5日 (土)

[ITニュース]IPv4アドレスが枯渇

理論的に割り当て可能個数がわかっていて、近いうちに枯渇するとわかっていても使い続けなければいけなかったので、難しい問題です。
そして、2011年2月3日、ついにその日がやってきました。

IPv4アドレスの枯渇がいよいよ秒読みに--問題の経緯と今後の課題 - CNET Japan
IPv4中央在庫の配布終了は「通過点」、本当の枯渇に備えを - @IT
日本でのIPv4アドレス在庫枯渇は3~6カ月後、当面は現行ポリシーで配布継続 -INTERNET Watch
IPv4ついに枯渇 - 日本は夏には割り当てゼロに | ネット | マイコミジャーナル
IPv4アドレス中央在庫がついに枯渇、ただし「これは通過点」:日本経済新聞
IPv4アドレスの中央在庫が枯渇 | IBTimes(アイビータイムズ)
■CNN.co.jp:IPv4アドレスの中央在庫が枯渇
■時事ドットコム:ネット上の「住所」枯渇=従来利用者は当面影響なし

すべてのIPアドレス(192.168.10.1のように、0~255までの数字4つの組み合わせで示される、インターネット上の住所。URLやメールアドレスに使われるドメインと原則1対1で対応している)を統括して管理するIANAが、在庫として持っていた最後の未割り当てのIPアドレスを割り当てたことで、「枯渇」ということになりました。
IANAから割り当てられたIPアドレスは、アジア、欧州など各地域の管理組織が管理し、さらに国別など下部組織に振り分けられます。そのため日本では新規の割り当てがまだしばらく残っていますが、今年の夏頃にはそれも在庫がなくなるという見通しです。

今後の対応として、割り当て可能個数が莫大に多いIPv6アドレス(IPv4アドレスの割り当て可能個数は2の32乗=約43億個、IPv6アドレスは2の64乗個で、43億の43億倍)への移行という形になると思われますが、個人的見解として移行にはかなりの時間がかかりそうです。
IPアドレスが枯渇しても、取得済みのアドレスには影響がなく、またIPv4アドレスとIPv6アドレスの間に互換性がなく、移行するにはユーザーへの負担が大きくなってしまうことが、移行を妨げる要因となりそうです。地上デジタル放送のように移行しないと使えない状況にして、強制力を持って移行させれば、話は別かもしれませんが。

ほかの方法、たとえばIPv4アドレスを節約して使うとして、割り当てられたものの使っていないIPアドレスを返却させる(買い戻してもよい)、割り当て個数をもっと細かな単位にする(/31は理論的に無理そうなので、/30で4個単位とか)など、いろいろ素人なりに考えてみました。
ですが、現状の割り当てルールを壊さずにこういった案を実現するのはほぼ不可能で、どこかで既存のIPアドレスと衝突するなど矛盾が生じてしまうので、不可能なのでしょうね。
やっぱり、何年か先に「IPv4アドレス停波」という形で、強制的に移行する日が来るのでしょうか。

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2011年2月 2日 (水)

[読書メモ]タラ・ハント『ツイッターノミクス』

ツイッターノミクス TwitterNomics(タラ・ハント)

ちょうどツイッターがブームとなり、関連本が何冊も出版されていた、2010年前半に翻訳された書籍のため、このタイトルとなっているようです。
原題は「The Whuffie Factor」(直訳すると、ウッフィーの要素)。書籍の内容としては原題のほうがよく表していると思いますが、直訳では何の本なのかわからない人も続出しそうですね。

「ウッフィー」という言葉は、この書籍が初出ではありませんが、ウッフィーの概念を伝える上で大きな役割を果たした一冊であることは議論を待ちません。ソーシャルメディアが日常的に使われるようになった現在、従来のマーケティング手法では顧客の満足を手に入れることができず、顧客のコミュニティに入り込み、信頼を勝ち得ることが顧客満足を高めるようになってきました。
そういう意味では、ウッフィーを「信頼」と置き換えることができるのかもしれません。信頼を高める特効薬はなく、むしろ信頼を高める目的でなされるいかなる行動も、逆に信頼を落としてしまうことになります。ウッフィーについても同様のことがいえ、ただただ愚直に、真摯に対応し続けることが、ウッフィーを増やす唯一の方法だと言えるでしょう。不思議なもので、ウッフィーというものは、ほしいと思うと手に入らず、意識していないといつの間にか得られているものです。
ですので、ウッフィーとビジネスは相性が悪い。ウッフィーを増やせばビジネス上有利になることはわかっていても、ウッフィーを増やそうとする行動が逆にウッフィーを減らしてしまったり、そうならないとしても短期的な利益に結びつかなかったりするわけです。ウッフィー時代のビジネストレンドが、先が見えにくくなっているのは、ウッフィーの本質的な部分が先を見せづらくしているからだと言えるでしょう。

本書の解説は、インターネット上で多数のジャーナリズム活動を行っており、MIAUの設立者でもある津田大介さんが行っています。
立場上声が大きくなってしまうことは避けられず、ウッフィーのルールである「大声でわめき立てない」に逆らってしまっている部分もあるかと思いますが、津田さんがこの書籍を解説するのは、適任でしょう。そして津田さんの視点から、日本のソーシャルメディアのあり方、ウッフィーのありようについて、方向性を示してくれています。現実がこの通りになるとは限りませんが(ウッフィーのルールにも「無秩序をよしとする」とある)、日本でもウッフィーという言葉は理解されなくても、ウッフィーの概念が広まっていくことを臨みます。

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2011年2月 1日 (火)

[ITニュース]エジプト民主化デモ、ネット遮断も「電話ツイッター」で対抗

やはり遠い国だということでしょうか、日本での報道は表面的な部分にとどまっている感があります。

米グーグル、エジプトの「ツイッター」遮断に対抗:日本経済新聞
電話でツイッター投稿可能に、エジプト情勢受けてグーグルなどが開発 国際ニュース : AFPBB News
米グーグル、エジプトでネット接続しないツイッターサービス開始 | Reuters
■asahi.com(朝日新聞社):国際電話でツイッター=ネット遮断のエジプト向け―米グーグル - 国際
ツィッター、新サービスでエジプト支援 : 国際 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

エジプトを含む中東の産油国は、日本がエネルギー資源のほとんどを依存している地域でもあり、私たちはこの地域の情勢にもっと目を注ぐべきなのかもしれません。ですが、多くの日本人にとって、「外国」は米国か、東アジアの近隣諸国のことであり、中東やアフリカへの意識は低くなってしまっています。

アフリカ北西部のチュニジアで「ジャスミン革命」と呼ばれる反政府デモからベンアリ政権が崩壊し、これがエジプトに飛び火する形になっています。私自身は報道による情報しか見ていないのですが、チュニジアではtwitterなどのソーシャルメディアが、反政府デモ=民主化運動に重要な役割を果たしたということです。デモに参加した民衆がソーシャルメディアをうまく使い、参加者の連携やベンアリ政権の不正を暴くなどの成果を上げています。
今年に入り、エジプトでも反政府デモが激化していますが、エジプト政府側は国内のインターネットを遮断する対応に出ましたが、これで民衆の動きが収まるわけではなく、あらゆる形で対抗する状況となっています。国内の現状を世界に知らしめたいという欲求は強くなるばかりで、電話による音声をツイートに変換するサービスが登場するまでになりました。

民主化運動の根本的原因や、革命が成功した場合の見通しなど、政治的な問題は私には語る力はありません。ですが、民主化運動、あるいはここまで大規模にならなくとも、草の根の民間の運動に、ソーシャルメディアは必須のものとなってきたということは言えると思います。
従来は口コミで時間をかけて運動を広げていくか、マスメディアの力を借りるしか方法がなかった。それがソーシャルメディアの力により、短期間に大規模な運動に広がっていく可能性が出てきました。歴史のifでしかないのですが、日本でも安保反対デモや大学紛争の時代にソーシャルメディアが使えたなら、革命が成功していたかもしれません。
とすると、日本も共産国家になっていたのかも……。

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