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2011年7月25日 (月)

[読書メモ]茂木健一郎『国がダメでも「脳」がある』

国がダメでも「脳」がある 自分を〝高度成長〟させる55のヒント(茂木健一郎)

脳科学者・茂木健一郎氏の最新の著書です。書店で平積みにされていたのですが、タイトルに惹かれて購入してしまいました。
タイトルに込められた著者の考えが、自分のそれと共鳴した気がしました。つまり、この国の将来、そして世界の未来を案じる人は多いのですが、自分自身をそこから切り離して成長することが今の私たちに必要なのではないか、という感覚で、作者と共感できるように感じたのです。
会社が、景気が、政治が、などなど、自分が満足する成果を上げられない理由を外部に求めることは簡単ですが、それではいつまでたっても成長することはできない、というのが1点。もう1点は、「国がダメ」とタイトルに明示して、国への期待を断ち切ったことです。

この書籍は発行日が今年の3月30日となっていますが、本文では東日本大震災について全く振れられておらず(偶有性や予想外の出来事の事例に、2010年からのギリシャ財政危機や2001年の米国同時多発テロが上がっていますが、東日本大震災への言及はありません)、震災前に原稿ができていたものと思われます。
震災前後でいろいろな変化はありましたが、日本という国の本質は何も変わらなかったといえます。政府は問題を先送りし、国民は痛みを恐れて責任を国に丸投げし、マスメディアは前者横並びで、政治批判を繰り返すのみ。天災は誰かが原因で起こったものではありませんから、それを機に自分たちの行動や思考を改めるのは難しいのですが、これでは「国がダメ」と断じられても仕方がないと思います。

話がそれました。結局のところ、日本に住んでいる以上、周囲の環境がリスクを回避する傾向にあることは間違いなく、周囲と同じようにリスクから逃げていては成長は望めない、ということです。
常にリスクのある行動をとり続けなければいけないのかどうか、私にはわからないし、自分もそこまではできていないと思います。ですが、リスクを取らなければいけない状況が目前に現れたとき、リスクを承知でその状況に立ち向かう覚悟は必要なのではないでしょうか。
「偶有性」という言葉が、本書には何度か現れます。哲学には詳しくないので正確な定義には触れないでおきますが、本書では「半ば必然、半ば偶然」というくらいの意味で使われています。これまで私たちは偶有性を避け、必然に起こることを選んできましたが、その結果が問題の先送りと責任回避となってしまったといえます。偶然を楽しむくらいでないと、これからの私たちは生きていくことさえおぼつかないのではないかと思われます。

「はじめに」にあった「ディカップル」という考え方、本書では環境と自分を切り離すという意味で使われていますが、これも個人の成長には大事だと思いました。自分の所属や肩書きに縛られ、自由な発想や行動ができないとすれば、せっかくの能力を生かし切ることができず、不幸だと思います。
また、環境から自由になって行動することで、多くの人に出会うことができ、多くの人に出会うことでいろいろな人格の内部モデルができるとあります。多くの内部モデルを持つことは、思考の多様性を認めることにもつながり、自分自身の思い込みを少なくすることができるということになります。昨今よく見られるコミュニケーション不全は、ある物事を自分の視点からしか見ることができず、それ以外の考え方を排除してしまうところに多くの原因があるように感じていますが、その背景には内部モデルが少なすぎるということがあるように思います。
グローバル化の時代でもあります。誰の考え方が正しい、というのではなく、いろいろな考え方に触れることで、物事を多面的に見ることが、これまで以上に求められるでしょう。

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