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2011年8月16日 (火)

[読書メモ]佐々木俊尚『キュレーションの時代』

キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる(佐々木俊尚)

博物館に「キュレーター」という役職がありますが、キュレーターには所蔵品にどのような価値があるのかを研究し、来館者に伝える役割が与えられています。また博物館の展示企画を行うのも、キュレーターの権限によってなされます。
本書『キュレーションの時代』でも、コンテンツと私たちの間に、コンテンツに意味(コンテキスト)を与え、私たちに伝える行為として、キュレーションが定義されています。知る人ぞ知るという知名度ですが、秀でた能力を持ったギター奏者や、映画、絵画などがこの世の中には多数あります。それらを「誰にどのように伝えるか」が大きな課題となっており、どのように解決したかがわかりやすく記されています。
ただ、そういった事例は特殊なものではないか、という疑問が現れるのですが、本書を読み進むにつれて一般的な概念として、作者の主張が明らかになってきます。

現在の広告のあり方に、疑問を持つ人は少なくないでしょう。自分は広告を受け取る必要はない、必要な情報は自分で見つける、という人もいるのですが、そこまで言わせるほどに(その人にとって)不要な情報が氾濫しているという事実を映しているともいえるわけです。マス広告の限界が来ているわけです。
ただ、自力で情報を得るというのも、自分の知識の範囲内でしか情報が得られないという問題があります。そういう意味で、自分に必要な情報が、自分の知らないところからも随時受け取れるような形というのは1つの理想かも知れません。「ライフログ」という、日常の言動を記録し、これをもとに必要な情報を与える仕組みはこの理想を達成する方法ではあるのですが、本書にもあるように気持ち悪い。私もそうですが、誰しも、個人情報やプライバシーをすべてさらけ出す社会になってしまうことは、どうしても抵抗感を持ってしまうでしょう。それは世の中の変化について行っていないというわけではなく、現代社会に生きる人間の本能的な部分であり、変化を拒むものだと単純に批判できるものではないと思います。
その折り合いをつけるものとして、フォースクエアやフェイスブックのように、能動的に自分の行動を外部に提供するものが出てきたと、本書では書かれています。この部分は個人的には疑問で、ライフログ化するには提供する情報があまりにも限られすぎており、違う話を無理矢理まとめているような違和感がありました。
個人的には、ライフログとプライバシーの折り合いをつける方法は今のところなくて、それゆえに自分が必要な情報が随時プッシュされてくるような技術は、遠い未来の話だろうと考えています。というより、自分にカスタマイズされた情報が自分に渡ってくること自体、強い違和感を感じます。何を基準に情報を選別するのか、そこから漏れた情報に有益なものがないと断定できるのか、プライバシーの問題が解決されたとしても、そういった気持ち悪さは残りますね。

逆に、コンテンツが優れていれば、広告などなくても口コミなどで伝わっていく、というのも誤りでしょう。かつて日本が陥った、「よい製品を作っていれば国際競争力はついてくる」という思い込みで交渉力をおろそかにしてきたのと、同じ誤りのように感じます。
そこで「キュレーション」が重要になってくるというのは、私も同感。
たとえば今回取り上げた『キュレーションの時代』という書籍がコンテンツであれば、私がこうやって書いているブログはキュレーションになるわけです。ところが、このブログ自体はキュレーターとしてあまり機能していない。
このブログをコンテンツとしてみれば、さらにキュレーターが必要になっているわけで、今回からブクログにも転載して、時間をかけてブログからブクログへ移行していきたいと考えています。

少なくとも、マス広告は限界を露呈したし、口コミは広告としては予想されたほど機能していない。また、私たちはコンテンツの制作者が対価を受け取ることは当然だと考えても、私たちにコンテンツが届くまでの間にいるもの(まさしくメディア=媒体のことであったりします)には対価を支払うことをよしとしない。
キュレーターは新しいメディアであるとともに、コンテキストの制作者でもあるわけです。そして誰でもがキュレーターになることができるので、消費者でありキュレーターである私たちが、キュレーションをどのように位置づけるかが今後のメディアのあり方を決めていくのではないかと感じました。

(同内容のブクログへのレビュー:http://booklog.jp/users/tamago915/archives/4480065911

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