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2011年8月 1日 (月)

[読書メモ]鈴木貴博『「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱』

「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱(鈴木貴博)

まず、自分の立場を本書になぞらえて書いておくと、1973年生まれの自分は、ワンピース世代(1978~88年生まれ)とガンダム世代(1960~69年生まれ)のちょうど中間にあたることになります。
自分の認識では(世間一般的にも?)、自分の世代はがっつりガンダム世代だと思うのですが、定義をわざと上にずらしているような感もあります。もちろん、人気アニメ・コミックである『機動戦士ガンダム』『ONE PIECE』を子供の頃に楽しみ影響を受けた世代ということなのですが、放映・連載当時13~19歳の世代をそれぞれ定義しているので、やはり世間の見方よりは5年程度上の世代になってしまうのではないかと思われます。
より一般的に使われる言い方をすれば、「新人類世代」と「ポスト団塊ジュニア」でしょうか。まあ、この言い方では本が売れないというか、そもそも書籍にならなかったでしょうけど。

本書では、矛盾を感じつつ組織の中で生きることを選ぶガンダム世代と、自由と仲間、すなわち横のつながりを第一に考えるワンピース世代を比較する形で論が進んでいきます。ところが、この世代間の特徴が前提となってしまっていて、事例は作者の都合のよい形でしか使われていないとか、世代間構想の本質に踏み込めないままアニメの設定だけ持ってきたような底の浅い論に終始してしまった感があります。
事例でいうと、野球の独立リーグからプロ野球(NBP)にドラフトで入団したある選手が、入団する球団に対する不満をブログで述べて問題になった事例を取り上げています。筆者は彼が指名されたNBPの球団が成績を残していないことを理由に、不満を述べるのも当然だという書き方をしていますが、彼がもといた独立リーグの球団も万年最下位だったわけで(ドラフト指名された年は勝率5割になったように、戦力と成績を整えてきましたが)。
柔道から総合格闘技に転向した石井選手の事例にしても、自由や仲間よりも自分が活躍できる場を求めての行動にみえるし、その行動力は買うとしても何かを守るための行動とは質が違うように思うのです。

そしてやはり、一番の疑問は、世代の違いではなく、年齢や社会経験の違いで、このような行動差が現れているのではないかというところです。つまりはこれから15年、20年たった後、ワンピース世代が本書に書かれている行動をそのままとり続けられるのか、組織の有り様を知ることで組織社会に飲まれていくことはないのか、ということです。
というのも、どの世代も、上の世代の思想や行動を否定しにかかるからです。ウィキペディアに記述された、以下の1文を引用します。

成熟した成人として、社会を構成する一員の自覚と責任を引き受けることを拒否し、社会そのものが一つのフィクション(物語)であるという立場をとるとされた。

(「新人類 - Wikipedia」より引用)

驚くべきことに、本書でワンピース世代の特徴としてあげられていることが、ガンダム世代とぴったり重なる新人類世代の特徴として記されています(残念ながら、この文章を裏付ける出典は示されていませんでしたが)。何が言いたいかというと、ガンダム世代も、上の世代が作った社会を否定し、そこから自由でありたいというのはワンピース世代と変わらなかったわけです。社会人として20年あまりの経験が、彼らを変えてしまったのでしょうが、それはワンピース世代にも同じく起こりうることです。

最後の未来予測ですが、ここまでドラスティックな変化は起こらないでしょう。若者政府のくだりは、自由を重視するはずの若者世代が、組織を作って仲間を縛っている時点で、これが起こりうるとしたのは噴飯ものです。ただ、ケータイ社会やグーグルの台頭がそうであったように、変化はいつの間にか起こっているのでしょう。その結果としての、若者を中心とした経済圏の発生は、あり得る話だと考えています。

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