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2011年9月10日 (土)

[読書メモ]横山泰行『「のび太」という生きかた』

「のび太」という生きかた―頑張らない。無理しない。(横山泰行)

『ドラえもん』は、私が子供のころの愛読書でした。買ったりもらったりして、全巻揃えようとしていました。22~3巻あたりで、ドラえもんを卒業して「週刊少年ジャンプ」に行ったんじゃなかったかな。いまではジャンプも卒業して、マンガは特定のものしか読まなくなってしまいましたが。
さて本書は、「ドラえもん学」の提唱者としても知られる、横山先生の著書です。ドラえもんを全巻全話、おそらくは全ページ全コマを知り尽くしている横山先生だからこその視点、というのが非常におもしろく感じられます。

一般的にはのび太は勉強も運動もできない男の子の代名詞で、ドラえもんの助けを借りないと何もできないと思われています。ですが横山先生に言わせると、のび太はドラえもんに依存しているわけでも、ひみつ道具の力でズルをして生きているわけでもありません。ひみつ道具で小さな成功体験を得ることはありますが、道具に頼るのはよくないことだと考えて、最後は自分の力でやり遂げようとします。
考えてみれば、目の前にひみつ道具という誘惑が転がっているのに、誘惑に負けない力は、人並み以上に強いのではないでしょうか。自分がのび太の立場であったなら、おそらくひみつ道具の誘惑に負けて、結果を出せばいいと言い訳をしながらズルをしてしまうのではないかと思います。それでその場はしのげたとしても、自分の成長にはつながらないし、次に同じことがあったときに対応できないということにもなります。自分にとっての「ひみつ道具」は、ネットの情報と言うことになるでしょうか。システム開発の仕事でプログラムを書くことも多いのですが、ある問題にぶつかったとき、ネットに上がっている解決策をそのまま使うことも少なくなく、その結果得られたものがきちんと自分のものになっているのか、ただその場をしのいだだけなのか、いささか不安な部分があります。

そして、あらゆるものに優しさをもって接する態度は、特筆すべきものでしょう。他人を蹴落としてでも偉くなりたいということは全く考えも及ばず、むしろ周囲の人間の目標達成や成長のために、自分が犠牲になってもかまわないと考えている描写が見られます。また、その優しさは人間に対してだけではなく、拾ってきた犬や猫をうちでは飼えないとママに叱られる場面は何度もありますし、映画第1作にもなった『のび太の恐竜』では、タイムふろしきで孵化させたフタバスズキリュウへの愛情をみせています。
さらに動物だけではなく、心を与えた人形や、台風のたまごといった、無生物にまで優しさの対象はおよびますし、ほかの登場人物の冷淡さと対比的に、あらゆるものに対して慈しみの心を持つことの大事さを知らされます。

もちろん、のび太の性格付けや行動は、作品をおもしろくするための技術的な面もありますし、読者層(小学生ですね)への教育的な意味も強かっただろうと思います。ですがそれだけのことだと結論づけてしまうのではなく、のび太の性格が、とくにここであげた「ひみつ道具に頼らない意志」と「あらゆるものに対する優しさ」が、のび太が誰もが愛せるキャラクターになった最大の理由であると、私は考えます。

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