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2011年10月17日 (月)

[読書メモ]山田昌弘『希望格差社会』

希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く(山田昌弘)

21世紀に入り、日本を含む先進国で様々な経済問題が起こっています。国家レベルでは日本の「失われた10年(20年とも)」をはじめ、米国ではリーマンショック、欧州ではギリシャに端を発するソブリンリスクが、各国に深刻なダメージを与え、国の将来に不安を投げかけています。
また今年に入ってからも、8月に英国で暴動がありましたし、10月には米国で「ウォール街を占拠せよ」とのデモが続いています。両者に共通するのは、経済格差の下層に固定されている人たちが、勤勉によって格差社会から抜け出すのではなく、暴力やデモという手段で格差社会そのものを破壊しようとしている、ということができるかと思います。
この書籍も、英国暴動を取り上げた「はてなダイアリー」の記事(下参照)へのコメントで紹介されていたものです。
イギリス暴動の裏にある鬱屈と絶望について

この書籍は2004年に書かれたものです。一読してわかるのですが、「ニート」という言葉が日本語として定着する前で、本編ではすべて「フリーター」で統一されています。フリーターはアルバイトとはいえ仕事に就いていたわけで、それがニートに置き換わったわけですから、本書出版からの7年で、仕事さえも諦めた、いいかえれば、いつかは自分のしたい仕事ができるという希望さえ失った若者たちが無視できないほど多くなったということができるでしょう。
現在の日本社会は、普通に働いて普通に生活することすら困難になってきている、と感じます。いかなる立場にいようとも、数十年の単位で安定した生活を送れる保証はどこにもありませんし、普通に働いているだけだと生活水準は下がりこそすれ上がることはないと断じてもよいでしょう。
そのような社会では、自分の生きている意味さえ見いだすのが困難になるかと思われます。かつては、自分自身や家族の生活、あるいは自分自身が向上することを望み、あるいは子供の成長や次の世代に希望を託すことがアイデンティティとなりましたが、今やそういった希望は、多くの人から奪われてしまったのではないかと思います。私は正社員としてある程度安定的な生活を送れていますが、将来に関しては悲観的にしかとらえられませんし、希望を持つことに努力が必要だというのが現状です。そう感じるのは自分の性格的な問題ではなく、多くの人が同じように感じているのではないでしょうか。

低成長社会の中で、社会に希望を与える力は、政府にはありません。先に低成長に陥った日本では政府の対策はことごとく成果を上げられませんでしたし、米国も欧州の大国も有効な対策を打ち出せずにいます。すぐには調べきれませんでしたが、北欧の高福祉国家は、この時代にあってもうまくいっているのでしょうか。
希望格差社会どころか、全ての人々が平等に希望を失いつつある社会で、個人レベルで希望を取り戻そうという動きが始まってきています。これまではお金や資産という形で将来の希望をイメージしていたかと思いますが、金銭的な部分から離れたところでの希望を求め、その最初として、非金銭的な希望のイメージを模索している段階ではないでしょうか。

「自由の国」(そこには当然成功者となり、他社と格差を作る自由も含まれる)米国で、格差是正を求めるデモが起こる時代です。私たちは資本主義の時代の終焉を目にしているのかもしれません。その次の時代は、「非金銭的な希望」のイメージが多くの人々の間で共有されたとき、そのイメージを示す単語で「○○主義時代」と呼ばれるように思います。

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