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2011年11月14日 (月)

[読書メモ]橋本治『大不況には本を読む』

大不況には本を読む(橋本治)

著者の橋本氏は小説家、文芸家で、本書のような経済評論は本職ではないと書かれています。団塊世代の人でもあり、高度経済成長やバブル崩壊も体験し、出版業界(ここでは小説などの読み物を想定)は不況に強いといわれていた時期も知っているというところから、話が始まります。
そして橋本氏の持論につながるわけですが、高度経済成長が日米の貿易不均衡を拡大し、日本が輸入を拡大することを米国に押しつけられたことから、バブル経済とその崩壊による不況が起こったと考えているようです。
(余談ですが、日本のTPP参加の論評でも同様の意見がありました。輸入拡大を米国が押しつけ、日本がそれを承諾する流れはいつも同じですが、それで日本への輸入を拡大できたのは、米国ではなく中国や韓国だ、という話は皮肉なものです。)
今世紀に入ってからのサブプライム問題、それに続くリーマンショックは、欧米各国が実態のないものを取引することで利益を得ていた構図が崩れたこと、日本は先進国の中で唯一「ものづくり」を主力としていたため金融不況の影響は受けなかったものの、実体経済が止まってしまって大きなダメージを受けたこと、などが主張として展開されています。

さて、出版が不景気に強いのは今は昔の話ですが、「ビジネス書ばかり売れて、小説が売れない」という嘆きが事実なのかどうか。自分は小説は読みませんが、自分の感覚では、電車の中で本を広げている人の半分は、小説です。ビジネス書や各種試験の問題集などの技術書を読んでいる人も多いとは思いますが、かなりの人が小説を読んでいるように思います。もちろん、何を読んでいるかまでのぞき込むことはできないものの(自分は乱視で遠くの細かい文字は見えないし)、隣や前の人の読んでいるものはちらっと見えることがあるので、そのときの感覚では、小説が読まれていないということはないと思います。
ただ、今では小説も娯楽のために読まれるものが増えてきてしまっていて、教養として読まれる小説は減ってきたのかな、と感じます。ベストセラーとなった『ハリー・ポッター』シリーズも『1Q84』も、娯楽的要素が強いでしょう。タイトルには「大不況には本を読む」とありますが、多くの人が心のよりどころとできる書籍は、ほとんどなくなっている、とはいえるのかもしれません。

そして、本書の最大の問いかけは、「今回の不況はどのようにして終わるのか」「どうなれば不況が終わったと認識されるのか」でしょう。これまでの不況との大きな違いは、経済を動かすシステム自体の構造問題であり、元の状態に戻れないことです。なので成長率や失業率で不況を脱したかどうか判断することは難しく、新しい経済システム、場合によっては資本主義を乗り越える概念の構築が必要になってくるかもしれません。
産業革命以降、経済成長を続けてきたことが限界に達したという表現もありました。とはいえ、人間は本質的に自己の成長を求めるものだと考えていますし、人間の集合体である社会や経済も、成長すること、進化することが究極の目的でしょう。これまでの経済成長の延長線には、新たな時代はないかもしれません。ですがそれは成長を否定するものではなく、別の形での変化、進化という形で新たな社会の成長を見ることができるかと思います。

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