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2011年12月16日 (金)

[読書メモ]ジェフ・ジャービス『パブリック』

パブリック―開かれたネットの価値を最大化せよ(ジェフ・ジャービス)

先月(2011年11月)にソニータブレットを購入し、電子書籍を本格的に使い始めるようになりました。昨年、iPadアプリとして購入した『夏野流 脱ガラパゴスの思考法』を除けば、初めて電子書籍で購入した本の1冊となります。
当面は電子書籍で読書していくことになるかと思いますが、だからといって紙の書籍がダメになるわけではなく、適材適所で共存していくのでしょう。紙の書籍が大きく発展したのは、グーテンベルクの印刷機の発明を抜きにして語ることはできませんが、本書では別の視点から、グーテンベルクを取り上げています。

つまり、15世紀にグーテンベルクが印刷技術を発明したことで、情報の流れが大きく変わり、一度に多数の人々に情報を伝達することができるようになりました。その結果、ルネサンスと宗教改革という、中世ヨーロッパを大きく転換させる出来事につながったとしています。
そしてこの20年ほどのネットやウェブの進化は、情報インフラのあり方を変えたという点では、グーテンベルクに匹敵する変化だとしています。それまでの情報の送り手と受け手が固定化されていた状態から、情報の流れが双方向になり、誰もが多数に向けて情報を公開できるようになった。そこで何を公開して何を公開すべきでないのかが、改めて問われる時代となったというのが、本書の趣旨といえるでしょう。

あらゆる情報が公開され、共有されることで価値を生むというのは、なるほど一理あります。自分が今どこにいるのか、何を食べたか、何を買ったかなどを逐一公開することで、意外なところでのつながりや、価値のある情報が得られることもあるわけです。自分はそこまで公開することはありませんが、このレビュー自体「いつどんな本を読んだのか」の公開に他ならないわけで、やはりある一面ではパブリックであるといえます。
その反面、プライバシーの問題があり、自分のことをどこまでさらけ出すのか、どこまで知られてもよいのかは議論が続いています。ただ、これは多分に感覚的なもので、人によって知られたくない情報の範囲は異なるわけです。結局、公開するかどうかは個人の判断にならざるを得ないでしょうし、自分に都合の悪い情報だからといって隠せるわけでもない、というところに落ち着いてしまうでしょうか。

余談気味になりますが、ツイッターやブログなどの炎上事例が後を絶ちません。時代がパブリックを求めているわけですから、どんな情報も公開される可能性を持っています。そう考えれば、公開されて困る情報はそもそも存在させない、つまり「匿名だから」「自分のことなど誰も見ていないだろうから」という考えで安易なツイートやコメントをすることは避けるべきだということになります。
もっというと、他者に対し怒りやあざけりの感情を持たない、自分に起こったことを率直かつ客観的に受け入れるという態度が、パブリックの世の中でうまく暮らしていく秘訣になってくるわけですが、こうなると別の自己啓発ですね。

閑話休題。企業や社会、政府に対しても、パブリックなあり方というものが提案されています。組織の中で情報を閉ざすのではなく、完成していない製品やサービスの情報も積極的に公開して顧客や市民のフィードバックを得て、改善を重ねていくプロセスが望まれるということでした。
このプロセスは、ネットサービスでは多く行われていますが、近年では形のある製品や商材についても行われてきており、米国の自動車ベンチャーの事例が紹介されていました。日本でも、食品などの新商品開発でこういったプロセスを部分的に取り入れている事例はありますが、もっと多くの産業で取り入れられてもよいのではないかと感じました。

自分の凝り固まった頭では、著者のいうパブリックな社会というのが想像できないでいます。ですが時代は確実に情報を公開し、共有する方向に進んでおり、作者が言いたかったのはこういうことだったのかと、自分にも理解できる日が来るだろうと期待しています。

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