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2012年1月19日 (木)

[読書メモ]岸博幸『アマゾン、アップルが日本を蝕む』

アマゾン、アップルが日本を蝕む(岸博幸)

この本によると、2010年が4度目くらいの「電子書籍元年」だったようです。今となっては実感がないのですが、KindleやiPadが日本国内で販売されるようになったのが2010年ごろで、本格的に使える電子書籍端末が出てきたので、今回こそはという感もあったのでしょう。実際にはコンテンツがそろわず、電子書籍元年は今年か来年か、それともまだ先かもしれません。
とはいえ、私もソニータブレットを購入し、電子書籍端末としても利用しています。また、勤め先で運営しているサービスを利用する形になりますが、電子書籍の自費出版を行い、作家デビューする話も進んでいます。書籍の電子化の流れは、今後さらに加速し、定着していくことになるでしょう。

出版、音楽、ゲームなど「文化」と呼べるものは、その裏側にビジネスの側面もあります。著者が主張しているように、文化とビジネスのどちらが大事かという話ではなく、両者が車の両輪として、バランスを保って進んでいくことが発展につながり、ひいては文化を守ることにもなります。その観点で言うと、急速な電子化、IT化はビジネスの側面を強調しすぎており、文化としては発展を妨げられているのではないかと感じるわけです。
(ゲームを例に挙げたのが違和感があるかもしれませんが、将棋をイメージしています。先日、コンピュータ将棋「ボンクラーズ」が米長邦夫永世棋聖と対局し勝利しましたが、コンピュータ将棋のもつ勝利優先のビジネスライクな姿勢が、将棋文化にどのような影響があるのか、不安な面もあります。)
文化というと曖昧になってしまうかもしれませんが、コンテンツの質を維持するための活動と考えれば、電子化、ネット化でコンテンツの質を落とさない仕組みを求めていくこと、と言い換えることはできるかと思います。
利用者としては、囲い込みやビジネスなど関係なしに自由にさせてほしい。とはいえ、完全に自由に使えるようになってしまうと、ビジネスが成り立たないどころか、文化も壊してしまい、次の世代に何も残せなくなってしまうでしょう。そのあたりが考えどころで、ビジネスと文化と顧客満足をどこでバランスさせるかが、電子書籍に突きつけられた課題といえそうです。

「ネット帝国主義」という表現は、作者が好んで用いているようですが、いかがなものかと思いました。米国のネット企業を十把一絡げにしてラベルを貼ることで、問題の本質を見失ってしまっているようです。人の個性、企業の方針を無視した議論は、暴論に近いものになってしまいます。
わかりやすい事例で言うと、ネット帝国主義のSNSは本名を要求される、という表現がありましたが、原則本名のSNSはフェイスブック「だけ」といっていい。マイスペースもミクシィも、ツイッターもハンドル利用が標準なのに、その違いを意図的にか無意識にか、無視しているわけです。
また、帝国主義という表現から連想されるものと、ネット社会が目指しているところとは、大きく異なるものです。ネット社会では情報の寡占、独占が進むために勝者は1社になりがちですが、その点をもってのみ「帝国主義」と言っているのではないかと思いました。

日本は、米国をはじめ諸外国の事物やシステムをまねて、自分たちの使いやすいように改良していく、優れた力があります。改良したものを国外に広めるのは苦手なのと、普段使って慣れているために改良と気づいていない部分もありますが、ネット社会になってもその傾向は続いています。
本書にはニコニコ動画の事例がありましたが、音楽は着うたとして、電子書籍はケータイ小説や携帯コミックとして、独自に進化しています。SNSもミクシィはまだまだ終わっていませんし、ツイッターではハッシュタグをお題にして大喜利を行う、少し前だとブログを個人の日記として用いるなど、日本ならではの展開の事例はいくらでも挙げられます。
なので、プラットフォームの発展については、何も心配することはないのですが、問題はやはりコンテンツの質。私たち受け手側も直感的で刹那的なものを求めてしまい、じっくり考えるということができなくなっているようです。私たちがもっと良質のコンテンツを求め、ビジネス一辺倒にならない姿勢を示せば、コンテンツの質が高まり、文化の発展という形で現れてくるのではないでしょうか。

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