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2012年3月11日 (日)

[読書メモ]井上明人『ゲーミフィケーション』

ゲーミフィケーション―がビジネスを変える(井上明人)

ゲーミフィケーション。「遊戯化」などと漢訳してしまうと少し意味が変わってしまうかもしれませんが、横文字よりも漢字のほうが、字面である程度の意味がわかるような気がします。つまりは日常生活の何らかの場面にゲームの要素を取り入れ、楽しみながら何かをしていくということで、実際には昔からあった考え方だと思います。
たとえばビジネスの場において、会議で使うために資料を何十部もコピーしないといけない。単純作業ですが、「どうすれば早くコピーがとれるか」と考えながらいろいろな方法を試して、実際に所要時間の記録を取っていくと、単純作業だったはずが記録更新のためのチャレンジに変わってしまいます。

そういった昔からの話が、なぜ今「ゲーミフィケーション」という言葉を与えられ、注目されているかというと、ソーシャルメディアの発達が重要な役割を果たしているからだということになるのでしょう。
本書の最初に書かれている事例は、作者自身が関わった、節電ゲームです。ちょうど1年前(本レビューの執筆が2012年3月11日)、東日本大震災の被害を受けて電力需給が逼迫し、関東では輪番停電が実施される事態となりました。そのことから節電意識が高まったのですが、「どれだけ節電できるのか」をゲーム化し、ツイッターを用いて節電寮を競わせることを実行しています。
同様の事例がツイッターなどのソーシャルメディアと、スマートフォンアプリで広まったことで、これまで個人や仲間内で行われていた日常のゲーム化が、「ゲーミフィケーション」に進化したといえるわけです。

ゲーミフィケーションは、日常の様々な活動にモチベーションを与えます。たとえば、モチベーションを感じて自立的に仕事に取り組める状況は理想的ですが、実際にはなかなかうまくはいきません。与えられたタスクをこなすのにゲームの要素を加えることで、自主的に取り組むことができるようになりますし、よりよい方法を見つけ出すことにもつながるでしょう。仕事はつらいものであり、我慢して取り組むものだという考え方は、すでに古いものとなっているといえます。
ただし、ゲーミフィケーションはゲームではないので、ゲームが目的となってしまうのは本末転倒。あくまでも日常の活動を楽しみながら行うことが目的なので、その仕組み作りには注意が必要だと感じます。

また、ゲームではないとはいえ、ゲーミフィケーションにおけるゲームバランスは非常に重要で、バランスが崩れてしまうとゲーミフィケーションが成り立たなくなってしまいます。難しすぎたり、特定の行動だけが有利になったり、特定の人だけが有利になったりすると、もはやモチベーションにはなりません。
個人や内輪でやっているときにはバランスの調整が簡単でしたが、ソーシャルになると途中でルールを変えるのは困難で、最初のバランスの設計が重要な課題になってきます(といいつつ、ルールの隙間をつく裏技が発見され、運営側が穴をふさぐといういたちごっこになってしまいがちなのですが)。

ゲーミフィケーションは、これからいろいろな分野に広まっていくでしょう。どうせやるなら楽しくやりたいし、ソーシャルメディアで個人間のネットワークが広がりましたから、何をするのにも対戦相手が見つかりやすい状況が生まれています。
それを、「ふざけている」「不真面目だ」と批判するのは筋が違う。どんな行動であっても、誰しも熟練し、成長したいと考えているはず。そのための目標設定は当然のことであり、設定した目標(=ゴール)にいかにたどり着くか、というのは、ゲームの要素に他ならないのですから。

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