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2012年4月21日 (土)

[読書メモ]海原純子『こころの格差社会』

こころの格差社会―ぬけがけと嫉妬の現代日本人(海原純子)

本書が出版されたのが2006年。当時は「勝ち組」「負け組」が流行語となり、堀江貴文氏らITベンチャーの成功者が時代の寵児としてもてはやされる状況にありました。
それから6年の間に、堀江氏はライブドア事件で犯罪者とされ、さらにリーマンショックと東日本大震災で、日本の経済事情は大きく変わりました。勝ち組、負け組という言葉も聞かれなくなりましたが、それは経済事情の変化だけではなく、勝ち組は本当に勝ち組だったのだろうか、という疑問が多くの人の中に起こったからではないかと思量します。

自分は、当時の言葉で言うところの「勝ち組」ではなかったでしょう。その後徳島から東京に転職し、埼玉に引っ越しましたが、収入はそれほど変化していません。ですが今は、自分は恵まれた側にいるのだろうと感じています。
学歴もあったし、2度の転職を経験してなお、正社員として働き、自分の仕事にやりがいをもって取り組んでいます。結婚もして、(子供はいませんが)幸せな家庭を築いています。形の上では、自分が恵まれた側にいることは、否定しようがありません。その立場から、より立場がよくない人、具体的には非正規雇用者やワーキングプアと呼ばれる人々を、どのように見ていくことになるのか、逆に私が彼らからどう見られているのか、考えさせられます。
個人的には、正社員と非正規雇用の間に壁を作りたくないし、ワーキングプアがなくなるような仕事のあり方、取り組み方を求めていきたいと考えています。また、「期限を定めない雇用契約」というものは全廃して、正社員も数年おきに雇用契約を更新するようにしていくべきでしょう。そして転職しやすい環境を作り、雇用の流動化を進めていくことで、正規雇用と非正規雇用の間の壁は取り払うことができます。

本書でもあげられていましたが、制度上のそれよりももっと本質的な問題は、両者間のコミュニケーションの断絶と、それに伴う格差の固定ということになります。これらの問題は、恵まれた側からは見えづらいものですし、恵まれない側は現状にあきらめてしまい、向上心やモチベーションが生まれません。こうやって問題が表に出ないまま、格差が固定される状況が続いていくことになります。
この問題の解決策は、実はそれほど難しくないと思います。恵まれた側が仕事でも技術でも、未来に通じる道を切り開くのですが、その道を自分たちで独占せず、恵まれない側の人々にも通ってもらうといった形で、すべての働く人を競争に参加させる、参加できる仕組みが必要かと思います。

文章中、どういった立場の人々を批判しているのか不明確で、見えない敵と戦っているのではないかと思わしき記述もありました。いわゆる「勝ち組」が、自分たちの立場や権力をかさにきて、その他の人々を支配的に扱うようなくだりのところですが、そういった人々が実際にいたのでしょうか。それとも、この6年の変化が、彼らから支配力や権力を奪ってしまったのでしょうか。
たった6年なのに、働く環境が大きく変わったのだといえるのかもしれません。もっとも、自分の周囲だけの事情で、自分がITベンチャー企業にいるという特殊性もあるのかもしれませんが、本書で指摘されるほど抑圧的な状況にはなく、むしろ働く側が自らの可能性を摘んでしまい、成長を拒否しているところが、2012年の日本を覆っている新たな問題だといえなくはないでしょうか。

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