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2012年4月14日 (土)

[読書メモ]中澤二朗『「働くこと」を企業と大人にたずねたい』

「働くこと」を企業と大人にたずねたい ―これから社会へ出る人のための仕事の物語(中澤二朗)

私は大学を卒業して、今年でまる16年となりました。その間、体調不良での休職と2回の転職活動を合わせた数か月を除いて、ずっと企業で勤めています。
その16年間でも、仕事を取り巻く環境は大きく変わり、働くことに意味を見いだしにくくなってきました。生計を立てる手段と割り切るのか、生活の一部として仕事そのものを楽しみたいと考えるのか、自己実現やステータスのために成果を上げるのか。個人間での考え方の違いも大きいですし、理想と現実の間にも深い溝があり、考え方が揺らいでいるのが感じ取れます。
本書著者は人事担当者として、長年多くの働く人を見ており、その経験をもとに書かれています。

一読して、主張を詰め込みすぎ、何が一番言いたかったのかがぼやけてしまった印象があります。主張を図にまとめたり、「NJ法」という独自のアイデアを盛り込んだりしてわかりやすく説明しようとしているのは感じられるのですが、その図やアイデア自体が複雑になりすぎ、私自身が著者の主張を咀嚼し切れていないかもしれません。
その中で印象的だったのは、「人間の時間軸」という長いスパンで仕事をとらえ、短期的な利益にとらわれないことと、「しごと穴」と名付けた、仕事を通して見える、働くことの意義を見つけることです。

自分自身としては、仕事の時間は(通勤や休憩も含めれば)生活の半分を占めるわけだから、仕事を楽しめないと生活は明るくならない。そして仕事を通して社会に貢献したい、有り体に言えば社会に貢献している自分の存在を感じたい。とはいえ安定した収入は必要(そのために企業に勤めています)で、与えられた仕事を気が向かなくても取り組むことはある、といった考え方です。
短期的な利益は目的にしていないし、それを目的にした瞬間、仕事はつらいだけのものとなり、仕事を通して見えるものが見えなくなります。著者はこれを「しごと壁」と呼んでいました。また、そういう人々が上場会社の株式を買い、経営に口を出すようになったことで、多くの働き手が不幸になったと感じます。
企業が、自社の活動を通して社会に与えるものは、金銭的利益以外に何かしらあるはずです。それをお題目として示すだけではなく、きちんと実践することが大事ですし、出資者も利益だけを求めるようなことはしないでほしいと思います。
日本的経営が行き詰まったのではなく、米国的経営を取り込んだ際、仏つくって魂入れずで悪いところだけを持ってきてしまった、あるいは米国的経営そのものが現在になって矛盾を指摘されていることが、現在の日本企業が総じて持っている課題だといえます。

働く側も、起業であったり、ノマドや在宅勤務といった従来の働き方に縛られない形であったりと、新しい選択肢が増えています。仕事が生計の手段であり、嫌なことをやらされているので、そこから逃げる方法と取れなくもありません。自分もこれらの選択肢は否定しませんし、多様な働き方が提供される社会が到来することを望んでいますが、現状から逃げるための選択だとしたら、どんな働き方をしていても仕事そのものに意義を見いだすのは難しいと思います。
私たち働く側に必要なのは、自分が携わっている仕事や作業が、社会のどの部分を支え、あるいは変えようとしているのかを知ることだと考えます。単に生計の手段として仕事をするのは、人生の半分を無駄にするようなものですし、企業の歯車でいい、と自分をおとしめることにもなります。
企業が変わらないといけないのと同様、私たちも働くことに対する意識を変える必要があります。ひいてはそれが、日本の社会や経済を明るくするきっかけとなると思います。

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