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2012年5月16日 (水)

[読書メモ]天野敦之『みんなが幸せになる「お金」と「経済」の話』

みんなが幸せになる「お金」と「経済」の話(天野敦之)

リーマン・ショック以降、欧米や日本では深刻な不景気が続き、もはや従来のモデルでの経済成長は望めないという悲観的な考え方が強くなってきています。
また、お金に対する考え方も変わってきて、利益を最大化する行動が必ずしも善ではない、と見なされるようになってきました。一部ではやや揺り戻しが大きすぎて、お金を稼ぐこと自体を忌避する主張も出ているようですが、生計を立てるだけの収入があれば十分だ、と考える人が増えてきていることは注目していいと思います。

こうなった原因は、リーマン・ショックを引き起こした金融至上主義が、資本主義や自由主義の考え方をゆがめ、またその限界を露呈させたことにあるといえます。著者の言葉を借りれば、他人から奪うことで自分の利益を得てきた経済の仕組みが、結果的に誰も幸せにしなかったということになります。
新しい社会、経済の仕組みが求められつつも、リーマン・ショック以前の成功体験が残っているものだから、もはやそこには戻れないとわかっていても新しい仕組みに踏み出せない。日本に至っては、20年以上前のバブル経済の成功体験をいまだに引きずっているわけですから、欧米でも新しい仕組みを取り入れるのには長い時間がかかるのでしょう。

そもそも、その新しい仕組みとはどういったものなのか。私たちは今までの物差しで新しい仕組みを測ろうとしてしまうので、その姿を理解することは困難であろうと想像できます。
遅かれ早かれ否応なく経験することになるし、そうして初めて理解できるのだろうと思いますが、ある日突然新しい仕組みに映るのではなく、連続的な変化で新しい仕組みにじわじわと置き換わっていくので、気づいたらこうなっていたという感覚になるのでしょう。
本書の後半にも、そのヒントとなることが示されています。

私自身の考えも入ってきますが、新しい仕組みのもとでの経済は、本書のタイトルに示されたことがそのまま目標となります。すなわち、人を幸せにすることを利益と考える経済です。
従来の経済学では、商品やサービスの価値を金銭に置き換え、定量的なものとしてしか見なさなかったし、またそうするしかなかったのですが、次の時代の経済は「幸せ」という定量的に測れないものを物差しとして用います。過去の流行語で言うと、「ウッフィー」であったり「評価経済」であったりするわけですが、本質的な方向性は変わりません。
幸せはお金とは異なり、誰かから奪って自分のものにするのではなく、自分の幸せを他人に与えることで、さらに増えていくものです。経済活動ですから金銭の移動は伴いますが、金銭の移動や商品・サービスとの交換は、幸せを分かち合うための手段となります。
お金の動きは少なくなるだろうし、従来の経済成長は意味を持たなくなってきます。測定できないものを基準とすることに不安はあるでしょうが、人々の幸せが直接の目的になる社会は、皆が真剣に幸せについて考え、動いていく社会となります。とうぜん、明るい社会になりますね。
(本書のタイトルに従って「幸せ」と書きましたが、「評判」でも「癒やし」でも「生きがい」でも、ポジティブな価値を持つ概念であれば入れ替え可能です。)

本書を電子書籍で読んだのですが、イラストがメインのため1ページをそのまま縮小して画面に表示され、文字が小さくなってしまいました。
機器の制約上やむを得ないのですが、電子書籍としてどう見せるのがよいのか、考えさせられる部分もありました。

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