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2012年5月19日 (土)

[読書メモ]香山リカ『しがみつかない生き方』

しがみつかない生き方―「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール(香山リカ)

精神科医として様々なメディアに登場している香山さんの、少し前の著書です。香山さんと勝間和代さんとの討論は話題になりましたが、その底本となった一冊といっても構わないでしょう。
勝間さんをはじめ、多くの自己啓発書に記されている、あきらめなければ夢が叶う、という表現に、香山さんは異論を出します。夢が叶わなかった人間は、失敗者であり落伍者なのかと。そもそも、あきらめないで努力を続けられる環境にあること自体が、恵まれているのではないのかと。
自分も、努力したい、するべきだという側の人間なので、香山さんの考え方には時折はっとさせられます。その努力の結果、得られるものは何なのか。成功や評価というものは、外部からなされるものでしかないのではないか。自分が本当に得たいものは何で、それを得るためには何をしなければならないのか。いろいろと考えさせられます。

成功と幸せは、別物なのだろうと感じます。夢が叶うまでの努力と、叶った後その状態を維持するための別物ですし、前者の努力はできても後者の努力は苦痛でしかないということもあります。なのに、夢が叶ったことで満足してやめてしまうのは、周囲も自分も許さないし、その維持のために苦痛でしかない努力を続けざるを得ない面はあります。はたして、それは成功だったとしても、幸せなのかどうか。
香山さんの病院には、そういった悩みを抱える方も、多数来院されるようです。傍から見れば恵まれた環境にいるように見えても、本人はその評価を維持するのに苦しんでいたり、その環境自体が苦痛だったりしているわけです。香山さんが勝間さんに異を唱え、努力して成功するフレームワークに違和感を持っているのも、そういったクライアントと多数接しているからではないでしょうか。

タイトルの「しがみつかない」ですが、何にしがみついているかというと、常識であったり世間体であったり、要は過去の前例や他人の評価に自分の立ち位置を当てはめて、そこでよいとされる位置にしがみついているわけです。そこに幸せを感じる人は、おそらく少数派でしょうし、むしろ何かの役割を「演じさせられている」ような違和感と苦痛を感じる人のほうが多いのではないかと推察します。
だったら、自分が本当に幸せに感じる瞬間はどういうときなのかを考えて、実践してしまえばいい。それが社会に貢献することでなくても、逆に退廃的でも、非生産的でも構わないと思います。その幸せに興じることで対価を得られて生活ができるというのはごくまれでしょうから、幸せを得るために働かないといけない、というくらい割り切って仕事に接するのも、ありだと思います。
自分は仕事そのものに幸せを見つけたいほうなので、働きがいのない仕事は苦手ですが、世の中にはいろいろな考え方がありますし、何が正しいということもないでしょうから。

幸せというのは金銭や地位や環境ではなく、むしろそこから自由になれることだと感じます。縛られず、しがみつかず。
自分はわりとそういう生き方をさせてもらえていると思いますし、恵まれているという自覚もあります。でもやはり、自由は大切にして生きていきたいですね。

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