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2012年5月18日 (金)

[読書メモ]加藤敏春『節電社会のつくり方』

節電社会のつくり方 スマートパワーが日本を救う!(加藤敏春)

次世代の電力供給網として期待されているスマートグリッドですが、東日本大震災後は俄然注目されるようになってきました。自分が初めてスマートグリッドの話を聞いたのは、2009年に埼玉に引っ越してきてすぐに参加した勉強会で、グーグルがこの事業に興味を持っているという話でした。そのときはグーグルは何屋になりたいのかと疑問に思ったのですが、ウェブと同じような形の電力供給網を、すでにかなり具体的に想定していたのですね。

大震災後、というよりは福島第一原発の事故後、電力供給のあり方が問われています。自由化や発送電分離といった競争を促進する施策もありますし、太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギー、そして本書で取り上げているスマートグリッドといった新しい仕組みの導入も提案されています。
財政難とねじれ国会で政治は動けず、5月には国内の全原発が稼働を停止し、再稼働も地元の理解が得られていない状況です。何の施策もなく、節電だけでこの夏を乗り切ることになります。電力不足で大規模停電に陥る地域が出る可能性もありますが、この夏を乗り切った後、ようやく国民が危機感を持って次世代の電力網のあり方を真剣に考えるようになる、……といいですね。

本書で紹介されている、スマートメーターについて。
家庭の電力消費を、従来のように1か月ごとの積算でとらえるのではなく、いつどれだけ使ったかを記録しておける装置が、スマートメーターと呼ばれるものです。スマートメーターを導入することで、電力消費の多い昼は高く、夜は安くといったきめ細かい料金設定を行ったり、家庭内の電気機器を管理したりできるようになります。家庭で太陽光などの発電、売電を行う場合も、スマートメーターに情報が蓄積されていくものと思われます。
反面、電力の細かな使用状況が電力会社に知られるところとなるため、プライバシーの問題が起こることが懸念されています。自分は認識していなかったのですが、たしかに利便性と情報漏洩は裏表の関係ですし、将来スマートメーターが普及したときに問題になってくるかもしれません。

こういったスマートメーターを各家庭に導入し、複数の電力供給源を組み合わせた電力網(スマートグリッド)を実現する地域が、社会実験としてではありますがいくつか出てきています。まだ実験は始まったばかりですし、市全体といった広い地域での導入を行ったところはありませんので、スマートグリッドが普及するとしても、あと十数年はかかるのかもしれません。とはいえ、歩みを止める必要はなく、着実に問題点を洗い出し、インフラとして日々の生活に耐えうる品質の電力網を作り上げてほしいものです。
当面は(1)大規模な節電、(2)シェールガス、メタンハイドレートといった新しいエネルギー源の開発、そして(3)再生可能エネルギーの実用化、といった流れになるのでしょう。スマートメーターの活用は、(2)(3)と並行した流れになるかと思います。
原発が利用できれば電力需給は楽になるのですが、世論は生活に影響が出ても原発を利用しないことを選んでいますし、私たちも原発再稼働はできないことを前提に、次世代のエネルギー問題を考えていく必要があります。

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