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2012年6月 2日 (土)

[読書メモ]城繁幸『7割は課長にさえなれません』

7割は課長にさえなれません(城繁幸)

自分は1996年に大学を卒業し、以降ITベンチャーの世界で働いています。これまでに2回転職していますが、休職と転職活動中の数か月を除けば、ずっと正社員として職についていました。前にも書いたことがあるかもしれませんが、これを前提として感想を書きます。

自分は正社員として、恵まれた立場にいることは理解していたし、本書を読んでその思いをさらに強くしました。正社員と非正規(契約、派遣、パート、アルバイトなど)との差が大きすぎて、その間にあるべき雇用形態が事実上存在しないのが、問題だと考えています。日本では正社員イコールフルタイム勤務ですが、その概念を取り払って、週2日だけ働く(残り3日は別のところで働く)正社員があってもいいと思うのです。
また、無期限の雇用契約というのも、見直すべき、禁止するべきだと考えています。今の日本に必要なのは雇用の流動化です。雇用が流動化すれば、非正規雇用者や失業者を含めて働きがいのある職場の選択肢が広がりますし、雇用する側も本当に必要な人材を選べるようになり、これまでの沈滞ムードを一新することができると考えています。また、雇用契約が原則有期となれば、成果を出さないものが淘汰される形となり、正社員になれたからそれでいいと努力を怠ることもなくなる、という面もあります。

ということで、著者と自分との考え方に大きな隔たりはないはずなのですが、本書の内容にあまり共感できませんでした。既得権益を持つ、正社員や雇用側を露骨にいやらしく書きすぎているのが、自分には好ましく思えなかったという点があります。
自分が働いている、ITベンチャー業界は、それなりに雇用の流動化や能力給の制度が浸透していると思いますので、書かれているほど露骨な格差は見えてこない部分はあります。業界が変わると本書の記述がそのままの世界があるのかもしれませんが、正社員や雇用側を悪者に仕立て上げようとデフォルメを行っているように思えてしまいます。

そして、雇用の流動化と能力給の採用、正規雇用も非正規雇用も区別しない同一労働同一賃金の考え方は賛成なのですが、そうなったからと言って働く側が楽になるわけではなく、むしろ従来の正規雇用者はより厳しく、非正規の方々も状況が悪化しないまでも、好転することはないと考えています。
それでもこういった取り組みは行うべきで、なぜかというと、本人の努力次第で環境を好転させられるという希望が与えられるからです。現状、非正規雇用の側から見れば、正規雇用になる道は事実上閉ざされていて、希望が持てないわけですから、そこに大きな違いが生まれるでしょう。
本書の最終章で、雇用の流動化で働く側がパラダイスになるような描写がありますが、こういう結果を求めてしまうとまた失望するだろうな、と感じます。この辺りの描写は難しいですが、夢も希望も持てない現状から、状況は変わらないが希望が持てるようになったという変化を、もう少しうまく描いてほしかったと思います。

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