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2012年6月 3日 (日)

[読書メモ]石橋毅史『「本屋」は死なない』

「本屋」は死なない(石橋毅史)

以前から気になっていた一冊でしたが、今年から読書環境を電子書籍リーダーに切り替えたので、読める機会はないだろうと思っていました。なにしろ、電子書籍は印刷の本とは対立構造にあり、印刷の本しか扱わない書店にとっては電子書籍は商売敵でしかないですからね。それが電子化されたということ自体に、まず驚きました。

ここでいう「本屋」は、一般の書店ではなく、そこで働く書店員、それも本の並べ方や棚のつくり方にこだわりを持っている書店員をさしています。本書を読むまで、書店の品揃えはともかく、並べ方まで意識したことはなかったので、新鮮な気持ちで読むことができました。
著者は取材した店員の方々以上に、書店のあり方にこだわっているのかもしれません。棚のつくり方にこだわりがなく、ただ取次から送られてきた書籍を並べるだけの書店は嫌っているし、そういう売り方しか認めない大型チェーンの書店に対する嫌悪感を隠そうともしていません。

とはいえ、とは思います。著者がこだわっているほど、読者や一般の消費者は棚の中の本の配置に気を留めているとは言えないし、書店員もそれを理解していて、わかる人には書店員の意図やこだわりがわかるし、わからない人にも目的とする本や関連書籍を見つけやすい配置を目指す、そういう形にしているのであり、こだわりを押しつけているわけではないでしょう。
本屋も商売でやっている以上、経営を継続させることもミッションのひとつ。来店者の利便性を優先させて棚を作っているでしょうし、そこは著者のこだわりとは相容れない部分となっているかもしれません。
その辺りの対比というか、著者が自分の理想と現実との間で苦悩している姿も見て取れます。自分の理想を押し通そうとする著者と、現実の商売の立場からそれは不可能だとする書店側のギャップは、いつまでも埋まらないものではないかと思います。

著者や書店員のこだわりとは関係なく、書店はいまや重大な岐路に立たされています。新刊書を多数発行し、書店は返本前提でそれらを受け入れるというビジネスモデルが崩壊しつつあり、売れない書籍が多数出版される状況が出版社や書店の経営を苦しめています。また、ネット通販や電子書籍の販売も本格的になり、書店で本を買わない人も増えてきました(私もその中に入っています)。
そういった中で、書店や出版社がどのような生き残り策、あるいはビジネスモデルの変換を行えるかは、今後の出版のあり方を含めて注目すべき部分ですが、まだその見通しは立っていませんし、本書の射程とは別の部分の問題提起であるようにも思います。

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